漆琳堂 × RIN&CO. — 素材を変えても、伝統は続く

無骨余白

漆器と聞いて、まず浮かぶのは古いイメージではないだろうか。伝統工芸、昔ながらの技、大切に使うもの。無骨余白も、最初はそう見ていた。

けれど、目に留まった器は違った。どこか今っぽい。伝統工芸というより、洗練された道具に見えた。

なぜ、昔ながらの漆器が、今の目に留まるのか。

寛政五年、河和田で生まれた塗師屋

創

寛政五年(1793年)、福井県鯖江市河和田。漆琳堂は、この地で創業した。

木地師が木を挽き、下地師が下地を整え、塗師が漆を塗り、蒔絵師が絵を描く。それぞれが工房を構え、分業によって一つの器が仕上がっていく。

漆琳堂が担うのは、その中の「塗り」だ。木地屋に仕事を依頼し、届いた木地に漆を重ねる。最後の工程であり、器の表情を決める工程でもある。そして、その最後の工程を担う者として、漆琳堂は自らの名前で器を売ってきた。

8代目、内田徹さん。大本山永平寺御用達の塗師屋として、230年以上、この分業の一角を守ってきた。

無骨余白がこのブランドに惹かれたのは、「守ってきた」だけでは終わらないところにある。230年、専門に徹してきた塗師屋が、今、木地師を自ら雇っている。木地を担う者が、産地から減っているからだ。守るために、守り方を変える。その判断に、無骨余白は敬意を持たずにいられない。

五代目の姿に、今また戻る理由

伝

分業を支えてきた担い手そのものが減っている。木地師も、下地師も、後を継ぐ人が少なくなった。2024年、8代目・内田徹さんは、木地のろくろを導入し、木地師を自ら雇用しはじめた。

実はこれは、漆琳堂にとって初めてのことではない。五代目の時代、この工房は木地・下地・塗りまでを一貫して手掛けていたことがある。専門化する前の、すべてを引き受ける工房だった時期が、確かにあった。

漆琳堂は、この10年余りで、外から来た職人を何人も迎えている。東京から移住し、初めての移住者職人として入った人。東京のセレクトショップで漆琳堂を知り、塗師としてこの地に移り住んだ人。学校では2つしか椀を作らなかった手が、この工房では木地固め100個から仕事を始める。

担い手を自ら育てる。それだけを見て動いた結果が、五代目の時代の体制と、同じ形になった。過去に戻ったのではない。今の必要が、たまたま同じ形を選んだのだ。

230年、伝統を支えてきた形は、一つではなかった。分業を選んだ時代もあれば、すべてを引き受けた時代もある。これからの何百年も、きっと同じだろう。時代ごとの変化を恐れず、真摯に向き合い続けること。無骨余白がこの工房に惹かれるのは、まさにそこにある。



木と樹脂、100年後にいちばん硬くなる漆

革

木を使うことは、漆器にとって当たり前のことだった。天然の木をくり抜き、漆を重ねる。それが何百年も続いてきた、椀のつくり方だった。

漆琳堂は、その当たり前に、新しい選択肢を加えた。木の粉と樹脂を混ぜ、成形した素材。天然木ではない。そこに、同じ刷毛目、同じ真塗りの技法で、漆を重ねる。

なぜ、新しい素材を選んだのか。答えは、使い方にある。天然木の椀は、食器洗い機に入れられない。日々の暮らしの中では、それが唯一にして最大の壁だった。

福井県、福井大学との産学官連携。漆液のブレンドと加工を重ね、食器洗い機に耐える硬い塗膜を生み出した。越前硬漆。化学塗料は使わない。100%天然漆でありながら、漆が最も硬くなるのは、塗り上げてから100年後だという。

素材を変えることは、伝統を手放すことではない。日々使われる器であり続けるための選択。その挑戦こそが、また一つの、新しい伝統になっていく。






越前硬漆 深ボウルL 真塗 黒(RIN&CO.)




越前硬漆 プレートセット(トレー丸・平M)(RIN&CO.)


越前硬漆 ファミリーギフトセット(平L・深M)(RIN&CO.)

北陸の地である理由、RIN&CO.

拓

漆琳堂には、もう一つの顔がある。RIN&CO.。2020年に立ち上げた、産地ブランドだ。

きっかけは、危機感だった。漆器は長く、業務用として、ホテルや旅館の食卓を支えてきた。しかし宿泊や食事のスタイルが変わり、その需要は縮んでいった。家庭の食卓も同じだ。カレーやパスタが並ぶようになり、和食器の出番そのものが減っていた。自社ブランドだけを続けていても、いずれ先細る。8代目は、そう感じていた。

同時に、北陸には、いくつもの優れた産地がある。木工も、白磁も、和紙も。しかしその多くは、下請けや部材で終わり、最終製品として世に出ることがない、と8代目は見ていた。技術はあるのに、名前を持たないまま流通していく。

「RIN」は、Reason In Northland——北陸の地である理由。「CO.」は、産地や地域の仲間たち。名前そのものに、理念が込められている。

漆琳堂が越前硬漆で実践した「素材を変える」という挑戦は、自分たちの工房の中だけのものではなかった。木地師の技術も、白磁の技術も、同じように最終製品になれるはずだ。RIN&CO.は、その考えを、漆器の外にまで広げるブランドだった。今も、越前硬漆、白九谷、越前木工という形で、その挑戦は続いている。

目立たないことを、美徳としてきた仕事

地

木地師が木を挽く。漆琳堂が長く見てきた、分業のいちばん最初の工程だ。

河和田のある木地職人は、こう言っていた。使っている木をわからせないのが、木地職人にとってはいい仕事だ、と。木目を消し、継ぎ目を隠し、まるで一つの塊から削り出したかのように仕上げる。木地師の技術は、目立たないことでこそ、評価されてきた。

RIN&CO.が木地師の技術を最終製品にするのは、河和田だけではない。丸トレーを手掛けるのは、石川県加賀市の山中漆器工芸だ。通常より大きく木地を取れる横木取りという技法を使う。ただしこの技法は木が歪みやすい。だから、原木を数ヶ月かけて乾かし、あえて歪みを出し切ってから、スチームで戻す。ろくろは機械でミリ単位に調整しながら、最後の仕上げは感覚に委ねる。栓の木を選ぶのは、木目の美しさと、軽さと強度を併せ持つからだ。

内田徹さんは、この木地をこう評した。漆を塗るのが惜しいと思うほど、木目が美しい、と。

越前木工も、加賀の木工も、漆を塗らずに、そのまま最終製品にする。塗ることに徹してきた漆琳堂が、塗らないものを扱う。産地を超えて、目立たないことを美徳としてきた仕事を、初めて表に出す。


柄のない白が、漆の隣に立つ

白

漆を保存する容器には、長年、無地の白い九谷焼が使われてきた。強度に優れ、その白さが、漆の赤や黒を引き立てる。内田徹さんは、そう語っている。

けれど、この白い九谷焼を商品として流通に乗せることは、珍しい。九谷焼といえば、色絵。華やかな上絵付けこそが、産地の顔だった。宮吉製陶の山本裕二さんは、そう明かす。

内田さんが、白い九谷焼の器を商品にしたいと望んだ。それを引き受けたのが、石川県小松市の宮吉製陶だった。1972年創業。普段は土から成形し、施釉、本焼きまでを担い、大手メーカーから何千、何万という単位の受注をこなしてきた窯元だ。その手が、柄のない、無地の器をつくる。

RIN&CO.は、その白九谷を、越前硬漆と同じサイズでつくった。漆器の隣に、漆器ではない器を置く。柄のない白は、どんな食卓にも馴染む表情を持っている。

白九谷 飯碗 白(RIN&CO.)

おまけ: 全21点、区分順

本文で紹介した21点を、区分ごとに一覧にした。

① RIN&CO. 越前硬漆 刷毛目

# 商品名 サイズ・素材 ポイント
1 越前硬漆 刷毛目 椀S 300ml 塗り直しのきかない刷毛目。毎日の汁椀に
2 越前硬漆 刷毛目 平椀S 420ml 熱が伝わりにくく、煮物・鍋の取り皿にも
3 越前硬漆 刷毛目 平皿L 650ml メイン皿として使えるサイズ感
4 越前硬漆 刷毛目 深ボウルL 1100ml 広く受ける形で、サラダや煮込みにも

② RIN&CO. 越前硬漆 真塗り・黒

# 商品名 サイズ・素材 ポイント
5 越前硬漆 平椀S 真塗 黒 420ml 塵ひとつ残さず仕上げる真塗りの黒
6 越前硬漆 平皿S 真塗 黒 140ml 重ねてコンパクトに収まる取り皿
7 越前硬漆 深ボウルL 真塗 黒 1100ml・約216g 大きさの割に軽く、扱いやすい

③ 漆琳堂 越前硬漆

# 商品名 サイズ・素材 ポイント
8 越前硬漆 水月器 小ぶり 湯呑・お猪口・小鉢と、使い方を選ばない
9 越前硬漆 朝倉椀 4寸 4寸 高台が大きく、どっしりと安定した形
10 越前硬漆 一乗椀 4寸 4寸 汁椀の定番型。黒・朱・麻の色展開
11 越前硬漆 一乗椀 4寸 ペアセット 2個入り 朱と黒、ペアで揃える

④ 漆琳堂 伝統(天然木+本漆)

# 商品名 サイズ・素材 ポイント
12 色拭き漆椀 天然木・本漆 白木に色漆と拭き漆を塗り重ねる
13 内塗り椀 200ml 外は色拭き漆、内は真塗りの二重の表情
14 真塗り椀 天然木・本漆 布を着せた下地から仕上げる伝統工程

⑤ RIN&CO. 越前硬漆 トレー・セット

# 商品名 サイズ・素材 ポイント
15 プレートセット(トレー丸・平M) トレー丸130ml+平皿M400ml 朝食やワンプレートに使いやすい組み合わせ
16 トレー丸 130ml スタッキングできる、暮らしに馴染む一枚
17 プレートギフトセット 平L・平S・トレー丸 3点セットで、贈りものにも
18 ファミリーギフトセット 平皿L・深ボウルM 家族の食卓を意識した組み合わせ

⑥ RIN&CO. 木工・白磁

# 商品名 サイズ・素材 ポイント
19 白九谷 飯碗 白 白磁・無地。大(325ml)・小(250ml)の2サイズ 漆の保存容器に長く選ばれてきた白
20 越前木工 隅切トレー 小 タモ材・ウレタン塗装 一汁一菜、一人分の食卓に
21 越前木工 丸トレー 9寸 栓の木・ウレタン塗装 横木取りで生まれる、木目の美しさ

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